プレゼンで頭が真っ白、会議で発言ができない、初対面が憂うつなど、人生には公私にかかわらず緊張を余儀なくされる場面がつきものですよね。
そんなときに使える、「誰でも簡単に緊張がとれる方法がある」と、演技トレーナーの伊藤丈恭(いとうたけやす)さんは言います。
俳優への指導はもちろん、ビジネスパーソンや主婦、学生を対象に、演劇理論に基づいた仕事や生活の支えになる緊張の取り方をレッスンしている伊藤さん。実は自身ももともと緊張しやすい性格で、俳優を志していた頃は出演した舞台やオーディションなどで何度となく失敗してきたのだそうです。
その経験から編み出したのが、演技理論の「スタニスラフスキー・システム」をベースにした「伊藤式・緊張撃退メソッド」。これまで3万人もの緊張をとることに成功してきたメソッドとは、どんなものなのでしょうか? 伊藤さんの著書、『人前で変に緊張しなくなるすごい方法』(アスコム)から紹介していきますので、人前であがってしまう人は必見です。
まじめな人ほどあがりやすい
そもそも緊張とは、医学的には、脳内ホルモンの一種であるノルアドレナリンが過剰に分泌されている状態。交感神経が活発になりすぎて、自律神経のバランスが崩れてしまいます。その結果、動悸や冷や汗、声の震え、赤面などさまざまな症状が出るのだそう。
緊張しやすい人の特徴は、まじめで責任感の強い人、と伊藤さんは言います。「責任を果たさなければ」と思えば思うほど、プレゼンで言うべきことを忘れてしまったり、商談でうまく話せなくて取引が成立しなかったり……。「自分に与えられた役割をきっちりと果たしたいと考えているまじめで責任感の強い人こそ、そんな思いにとらわれてしまう」と伊藤さん。
さらに、「私は緊張していない」と言い聞かせたり、「役になりきれ」と暗示をかけたりすると、かえって緊張が高めてしまってドツボにはまることも。これは心を操作しようとして、少しでも無理強いするとフリーズしてしまうのだそう。
スタニスラフスキー・システムには、「心は直接操作できない」という教えがあります。
感情をこめろ、役になり切れ、勇気を持て、などと心を直接操作しようとしても、それは無理強いであり、かえって緊張はひどくなり、頭の中が真っ白になるだけだというのです。『人前で変に緊張しなくなるすごい方法』85ページより引用
その一方で、「心は間接的には誘導ができる」、つまり身体を使うことで心に影響を与えられると言います。好きな歌を口ずさんでいたら気持ちが明るくなった、という経験をしたことがある人も多いと思いますが、まさに、この理論が当てはまります。
スタニスラフスキー・システムをベースに伊藤さんが編み出した緊張をほどく方法は、「素の自分」から「別の自分」に自動的に切り替えてしまうことで、「緊張しない自分」を目指そうというもの。
思考を停止し、緊張している人が絶対にしない行動をすることで、心を楽しませるのがポイントに。「考えるより先に行動すること。そうすることで、心は勝手に誘導されます」と伊藤さんは言います。
脳を楽しくさせる「笑い」トレ
大事なイベントの日に自宅でやっておくといいのが、「笑い方7変化」という動き。
脳を楽しくすることが目的で、鏡の前で顔をゆがめたり、声質やトーン、スピードなどを変えながら、「ふぇっふぇっふぇふげぇっ!」「フォッフォッフォッフォッ!」などと大声で笑うものです。なるべく大げさに行うことがポイントに。
緊張時、人は「楽しくない」状態ですが、無理やりにでも笑っていると、いつのまにか心まで楽しい状態に誘導されていくのです。
緊張しやすい自分を壊す、めちゃくちゃダンス
もうひとつ、緊張しない予防策が「ジブリッシュダンス」というもの。
意味も設定も感情も何も考えずに、たとえば「シュビドゥバドゥバラ〜ララルラレ」などと、なんちゃって外国語みたいなめちゃくちゃ言葉をしゃべりまくります。
踊るような振りをまじえて行えば、さらに効果的です。『人前で変に緊張しなくなるすごい方法』23ページより引用
伊藤さん曰く、「ジブリッシュダンス」の目的は、きちんとした日本語を話さなければという常識や理性から解放されて、緊張しやすい自分を壊していくこと。ちなみに、「ジブリッシュ」とは「めちゃくちゃ言葉」という意味なのだそう。
どちらも、それぞれ2分でOK。これなら取り入れやすく、本番前に簡単に実践できそうです。
本番直前は緊張から意識をそらす
基本的には自宅を出る前に行う「伊藤式・緊張撃退メソッド」で、緊張とは無縁で本番を迎えられると伊藤さん。ただ、世の中なにが起こるかわかりません。そこで現場のシメとして、会場に到着したら「その場ダッシュ」をするのがおすすめ。
その場で駆け足をしているつもりでモモ上げダッシュを行なってください。体に意識を向け、心が緊張に向かわないようにします。
『人前で変に緊張しなくなるすごい方法』26ページより引用
近くの公園や人通りの少ない廊下、トイレなどどこでやってかまわないそう。疲れて息が上がるくらいに行うと効果的。身体が疲れると、緊張している場合ではなくなるのですね。
このほか、「全身グッ・パー」や「肩ストン」など、万が一、本番中に緊張してわけがわからなくなってしまったときのための4つのお守りも本書で紹介されています。
緊張撃退メソッドを実践し、人前での変な緊張から解放され、どんな場面でもリラックスして物事にあたれるようになりたいですね。
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