ここ数年、(特にセリアック病ではない人の間で)ブームになっているグルテンフリー。手っ取り早く炭水化物を減らす方法とか、健康食のように思われがち。しかし、必要もないのにグルテンを断つと、心臓の健康に良くないかもしれないのです。
実は気をつけないと、自分の判断でグルテンフリーにするのはとても危険。最近、英国医学誌BMJ誌に報告された研究によると、セリアック病ではない人がグルテンフリー食にした場合、心臓と血管の病気になるリスクが高くなる怖れがあるという結果も。その理由はどうやら全粒穀物を取る量が減るから(つまり、全粒穀物に含まれる心臓に良い食物繊維が減るのに補充しないから)。
セリアック病は遺伝性の自己免疫疾患(アメリカ人のおよそ1%がこの病気)。ほんの少しでもグルテンを取ると、炎症や腸のトラブルが起きてしまいます。この病気の人にとっては本当に大変。
ところが、セリアック病ではないのに、別の理由でグルテンフリー食にする人が増えています。ある研究によると、セリアック病ではないけれどグルテンフリー食の人は、2009年から2010年には人口の0.52%でしたが、2013年から2014年には1.69%と3倍に。
実はグルテンって何なのか? よく知らないのはあなただけではないはず。
グルテンとは、小麦やライ麦、大麦、それから「ファッロ」などのさまざまな古代の穀物に含まれるたんぱく質のこと。これを取らないようにすると、気力が出て、機敏になり、減量にもいい、と多くの人が言いだしたために、グルテンフリーがトレンドに。
確かにグルテンフリーにすると、すぐにそんな効果は現れます。しかしそれは、余分なカロリーを取らなくなったから、あるいは加工食品を食べなくなった(クッキーやドーナツを考えてみて)からで、グルテンとは何の関係もなさそうなのです。
少なくとも先ほどのBMJ誌の研究によると、必要もないのに完全にグルテンフリーにした場合、栄養が偏るという問題が。つまり全粒穀物を取る量が減るために食物繊維が足りなくなります。
どんな食事でも、大切なのはバランス。
食物繊維が豊富な別の食べ物を積極的に取れば、グルテンを減らしても問題はありません。例えばリンゴ。食物繊維は何と4.4 g。
この研究は、セリアック病ではない10万人を対象にグルテンフリーの影響を26年にわたって調査。その結果、グルテンフリー食で全粒穀物が不足した人は、食物繊維を取る量が大きく減って、心臓と血管の病気になるリスクが増えました。この研究に参加したハーバード大学医学部准教授、アンドリュー・チャンさんがCBSニュースで話したところでは、「食事でグルテンを取る量が最も少なかった人たちは、心臓の病気になるリスクが15%高くなりました」
現状の結果としては、不必要にグルテンフリー食にすると、栄養と食物繊維が豊富な食品で慎重に補充しない限り、心臓に問題が起きるリスクが高くなるかもしれません。グルテンを含む大麦やライ麦、小麦などの全粒穀物は、心臓と血管の健康に良いから。
セリアック病や、ほかのグルテン過敏症ではないのなら、あまりグルテンを怖がらない方が良さそう。ほとんど加工されていない全粒穀物は特に。フリーカ、大麦、スペルト小麦、カムート小麦、ファッロなどは、すべて栄養がぎっしり詰まっています。
でも、グルテンを取り始めなくても、心臓と血管の病気を防ぐための方法はあります。研究者のおすすめは、オーツ麦や玄米、キヌア、キビなどのグルテンフリーの全粒穀物を取って食物繊維を増やすこと。
穀物に限りません。食物繊維が豊富な果物と野菜をたっぷり盛り込んだ食事なら、心臓の健康に良い食物繊維の1日の必要量25 gも簡単にクリア。アボカド、えんどう豆、ヒラマメ、ラズベリー(たった1カップで何と8 g!)、洋ナシ、ブロッコリー、アーティチョーク、芽キャベツはすべて食物繊維が豊富な素晴らしい食べ物です。
コメント