アレルギーや高血圧などに効く薬が、歯を危険にさらしているとしたら?
米国老年医学会誌に掲載された最新研究によると、薬の一部が口の健康にはよくないとのこと。それは口の中を乾燥させたり、唾液が出づらくなったりする副作用が起こる可能性があるから。
口の中が乾いてしまうと、細菌が口の中にとどまりやすくなって、虫歯や感染症を引き起こしやすくなります。乾燥を招く薬はさまざま。その薬効としては尿失禁、うつ病、不眠症、不安症、高血圧を治療するものが含まれるとのこと。
「高齢者ならではの問題は薬を複数飲んでいること。特に尿失禁などの症状がある場合です。口が乾くと歯を失いやすくなるばかりではなく、噛んだり飲み込んだりすることが難しくなり、栄養摂取にも問題が起こってしまうのです」と、主任研究者を務めた、ストックホルム・エイジング・リサーチセンター博士のエドウィン・タンさん。
なぜ薬を飲むと口が乾くのか?
「唾液を出している分泌腺に薬がどう影響をしているかですが、メカニズムは薬によって異なります」と、カリフォルニア・ブレス・クリニック設立者で、歯科医のハロルド・カッツさん。
たとえば、ある抗うつ薬は、神経伝達物質のアセチルコリンを邪魔している分子に作用。この分子がいつまでも存在する状態になってしまい、アセチルコリンが唾液腺の受容体に近づけなくしてしまうのです。
一方で、β遮断薬、利尿薬、カルシウム拮抗薬と呼ばれる血圧を下げる薬は、腎臓からナトリウムを排出させるために、体内の水分の不足を招きます(結果として、いずれの場合も唾液が出なくなる)。
「プロセスがどうあれ、口が乾くと大きな問題が生じる恐れ。唾液は生まれついて持った大切なもの。酵素のほか、ミネラルや高い濃度の酸素などの有用な成分が含まれ、口の中をバランスの取れた状態に保っているのです。口臭や歯周病の原因となる細菌、虫歯は、唾液が十分にあれば増えません」とカッツさん。
実際、朝起きたときに息が臭いのは口が乾いているから。寝ている間は唾液がほとんど出ないため、細菌は増えがち。朝に飲み物を飲んだり、通常通りに唾液が出るようになったりして、やっと元に戻るのです。
歯を守る方法
「幸いなことに、歯を失いたくないからと薬をやめることまでしなくても大丈夫。まずアルコール入りうがい薬も含め、アルコールを口にしないようにすること。口の乾燥を招いてしまうから。ラウリル硫酸ナトリウムを含まない歯磨き粉を使うこともおすすめ。やはり口の乾燥につながるため。」(カッツさん)
「最後、もっとも重要なことは、水分を補給すること。水を飲む量と回数を増やすと、口の乾燥を招く薬の影響を打ち消せるので良い」とカッツさんは説明します。
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