スポーツ、医療、美容などさまざまな分野で活躍しているアミノ酸。たんぱく質の元としてみなさんもどこかで耳にしたことがあるでしょう。しかし人の身体の構成にかかわるアミノ酸は20種類もある上、必須アミノ酸と非必須アミノ酸に分かれており、それぞれの種類や詳しい働きまでは知らない人も多いのでは? アミノ酸は、たんぱく質として身体のあらゆる部分で利用されているため、不足すると筋力低下やうつ症状、むくみ、不眠、抜け毛など全身に影響する栄養素。そのため、摂取量などを気にしなくても大丈夫だろう、と軽視してはいけません。そこで今回は必須アミノ酸に焦点を当て、その働きや摂取する時に参考になる情報をお伝えしていきます。
必須アミノ酸とは
人のたんぱく質を構成するアミノ酸は20種類あり、成人ではそのうち11種類は体内で合成できる非必須アミノ酸、残りの9種類は体内で合成できない必須アミノ酸です。アミノ酸は20種全てが筋肉や血液の形成に必要。つまり必須アミノ酸を取り入れないと肌のハリが失われたり代謝が下がって痩せにくくなったりします。そのため、私たちは必須アミノ酸を食事から摂取しなければならないのです。また、アミノ酸はWHOによって推奨摂取量が定められており、その量を目安に摂取するのが良いとされています。しかし各アミノ酸の含有量をいちいち量るのは難しいですよね。そこでここからはアミノ酸摂取の参考になるアミノ酸スコアという評価方法をご紹介します。
アミノ酸スコアとは
それぞれのアミノ酸が食品中のたんぱく質1gあたりに含まれるべき理想の量は、アミノ酸評点パターンと呼ばれています。そしてアミノ酸評点パターンに対する実際の食品中のアミノ酸含有量を割合で表した中で1番小さい数値がアミノ酸スコア。つまりアミノ酸スコアとは、その食品の中で1番少ないアミノ酸が、どの程度不足しているかの割合を表したものです。これは100が上限で、値が大きいほどアミノ酸のバランスが良いことを示します。必須アミノ酸は、1番不足しているアミノ酸の量にあわせて機能するため、それぞれのアミノ酸をバランス良く摂取していないと体内で機能しません。しかしアミノ酸スコアが低くても、他の食品と組み合わせれば補うことができます。
例えば白米のアミノ酸スコアは61点、パンは44点、牛乳は100点です。つまり、トーストと一緒に牛乳を飲んだりすればアミノ酸のバランスが良くなり利用効率が上がるのです。ちょっとした一工夫で栄養価が大きく変わるのは驚きですね。ここで、「それならアミノ酸スコア100点の食品を摂れば良いだけなのでは…?」と思った方もいるかもしれません。確かにアミノ酸の面ではアミノ酸スコア100点の食品だけで問題ないでしょう。しかし実際、アミノ酸スコア100点の食品は動物性タンパクに偏っているため、ほかの栄養バランスが乱れて違う病気に悩まされる心配もあります。また、アミノ酸スコアが100点の食材でもその摂取量が少ないと十分にその機能が発揮されないので、単品のアミノ酸スコア満点の食品だけで毎日基準値のアミノ酸を摂取し続けるのは難しいでしょう。だからこそ普段口にする食品のアミノ酸スコアを知り、不足するアミノ酸を補い合うことが大切になるのです。
(参考資料:厚生労働省/特定保健指導の実践的指導実施者研修教材 Ⅲ栄養指導)
必須アミノ酸の各特徴
ここからは必須アミノ酸の種類と働きを1つずつ詳しくご紹介していきます。
ダイエット効果も!?「ヒスチジン」
- 働き:赤、白血球の生成、乳幼児の成長、摂食抑制、脂肪分解作用
多く含む食品:かつお、いわし、チーズ、など
ヒスチジンを原料として食欲抑制や脂肪燃焼作用のあるヒスタミンが合成されるため、ダイエット効果が期待できます。また、ヘモグロビンの形成に必要なので、不足すると貧血になってしまうので気をつけましょう。
形を変えて多彩な働き!「トリプトファン」
- 働き:神経伝達物質セロトニンやナイアシンの材料、血圧やコレステロール調節
多く含む食品:アジ、大豆、卵、など
トリプトファンの役割の多くはセロトニンに変換されることで発揮され、偏頭痛予防、気分の安定、不眠解消、月経前症候群の改善などさまざまな効果が期待されます。しかし過剰摂取では命に関わるような重大な副作用につながることもあるので適度に取り入れるようにしてくださいね。
バランスの良い食事が肝!「リシン(リジン)」
- 働き:カルニチンの材料、身体組織回復、肝機能向上
多く含む食品:かつお、チーズ、凍り豆腐、など
カルニチンは脂肪をエネルギーに変換するために必要な栄養素なので、リシンを取り入れることで脂肪燃焼効果が期待できます。米や小麦などの穀類にはあまり含まれていないため、リシン摂取にはバランスの良い食事を心がけましょう。
飲みすぎた!と思ったら「スレオニン(トレオニン)」
- 働き:成長促進、脂肪肝抑制、胃酸分泌調整
多く含む食品:まぐろ、豚肉、チーズ、など
スレオニンは肝臓に脂肪が過剰に蓄積するのを防いだり、胃炎を予防したりするという役割があります。飲みすぎると肝臓に脂肪が溜まりやすいので、そのような時は意識して摂取してください。リシン同様に穀類には少ないので主菜や副菜の揃った食事を摂るようにしましょう。
運動前に摂取して!「ロイシン」
- 働き:筋肉維持、たんぱく質の生成・分解調節、血糖コントロール、肝機能向上
多く含む食品:かつお、鶏むね肉、卵、など
バリン、イソロイシンと並んで分岐鎖アミノ酸(BCAA)と呼ばれ、筋肉づくりに重要なアミノ酸です。運動中に分解するため、激しい運動の直前に摂取すると効果的ですよ。
うるつや髪に「イソロイシン」
- 働き:筋肉をつくる、疲労回復、神経機能補助、肝機能向上、髪の健康を保つ
多く含む食品:豚肉、牛乳、卵、など
BCAAの一つで筋肉をつくるために必要なほか、糖を筋肉に取り込んで糖尿病を予防する働きもあります。また、髪のたんぱく質の構成成分であり、髪の潤いを保つために欠かせない栄養素です。
「バリン」でハリのある肌に
- 働き:筋肉をつくる、窒素バランスの調整、肝機能向上、美肌効果
多く含む食品:マグロ、レバー、チーズ、など
BCAAの一つで筋肉をつくる役割があるほか、血液中の窒素バランスを調整して体内のたんぱく質の量をコントロールし栄養不良を予防しています。また、肌のハリを保つ成分に関与するため美肌効果もありますよ☆
記憶力UP効果も!?「フェニルアラニン」
- 働き:神経伝達物質の材料、血圧上昇、鎮痛
多く含む食品:レバー、まぐろ、ナッツ類、など
フェニルアラニンは脳の信号を伝える物質の原料になるので、摂取によって脳の機能を高めて記憶力を上げたり、気分を高揚させたりできます。しかし過剰摂取では高血圧の心配があるため特に心臓が悪い方や高血圧気味の方は気をつけてくださいね。
たんぱく質合成を始めるために!「メチオニン」
- 働き:カルニチン合成、肝機能向上、他のアミノ酸合成
多く含む食品:まぐろ、鶏肉、豆乳、など
リシン同様、カルニチンに関与することで脂肪燃焼効果が期待できます。メチオニンはたんぱく質合成で最初に必要となるアミノ酸であるため、不足するとたんぱく質が十分に合成できません。アルコール分解で消費されるので、飲酒量の多い方は意識して摂取しましょう。
おわりに
いかがでしたか?アミノ酸はやみくもに摂取しても意味がありません。アミノ酸スコアを参考にバランス良くアミノ酸を摂取し、健康的で美容的な食生活を送りましょう☆
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